空の殻

ゲームの感想とか。

【Steam】ゲームプレイ日記 #18【Shady Part of Me】

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 今回の感想は「Shady Part of Me」になります。

  このゲームはアクション要素のあるパズルゲームですが、雰囲気がかなり好みでした。光を怖れる少女と光の中でしか存在できない少女の影。二人は夢の世界から脱出するために協力しながら進んでいきます。そのため、ステージは夢の中特有の不合理さと不条理さを孕んでいますが、驚くほど調和が取れていて一切の不快感なく夢の世界に没入することができました。グラフィックにBGM、二人の声と字幕、本当に計算し尽くされているようで非常に質の高いゲームだったと思います。

 こうした種類のゲームは、雰囲気ゲーなどと揶揄するような人もたまにいますが、本作はそうした輩を黙殺する素晴らしさでした。

 パズルは少女と影で操作が2Dと3Dに分かれており、また、それぞれの特性を生かした仕掛けになっています。影の少女が進めるように、光源や遮蔽物を動かして道をつくったり、少女が届かない仕掛けを動かして影の少女に操作させたり、等々ありますが、先に進むたびに新たな仕掛けが増えていくので、作業感が少なく、さらにクリアしたときの満足感が大きかったです。

 また、パズルを解いていて、全くと言っていいほどストレスに感じるところがなかったのも非常に好感でした。2Dと3D、二人のキャラクターを操作しながら進むため、煩わしさを感じてしまいがちですが、ボタン一つで操作を巻き戻すことができるので、間違えたり、アクションに失敗してしまっても、ゲームオーバーにならずに直前から再開することができます。また、ステージの始めに戻るボタンもありますが、失敗しても基本的に詰むことがないような構成になっているのも、親切だと思いました。一部折り紙を集めるうえで、使用することもありましたが、1ステージが短く、いつでも過去のステージに戻ることができるので、ゲームを単純に楽しませてくれる制作者さん方の努力が垣間見ることができました。欲をいえば、未取得の折り紙がどのステージにあるか、分かるようにして欲しかったと思います。

 ストーリーに関しても心温かくなるようなもので、絵本を読んでいるようでした。題材としては、正直ありがちですが、そこにゲーム要素が加わることで、より感情移入がしやすく、途中からは私も応援するような気持ちでプレイしていました。

 光を避けるボサボサ髪の少女、彼女にしか分からない視線の数々。初めは影の少女が助け導いていくのだと思いましたが、影の少女自身もまた、自分の恐怖に向き合い成長することで前に進まなければ出られないというのもよかったです。文学的、宗教的には大抵、影というのは人の悪い部分、乗り越えるべき相手、儚さの象徴として描かれますが、それとはまた少し違った解釈がされていると思いました。影の少女は行動的で、パズル面でも運動能力が高い。また、言動も少女に比べて大人びている。初めは、光に晒されることを放棄した少女が決して届かないもの、すなわち少女の理想の存在であるのだと考えていましたが、影の少女にも弱いところがあり、また、一人では先に進むことができません。影の少女も、あくまで、少女が切り離してしまった自分の一部であり、だからこそ、ラストで少女は夢の世界から脱する強さを得ることができたのだと思います。

 さて、最後に経験者目線で言うと、カウンセラーさんの声って本当に耳障りなんですよね。それが仕事ですし、中には親身になって相手してくれてる人もいるかもしれないですけど、その親切心がすごく苛立たしく感じられるんです。それが、普通に受け止められるようになったとき、ようやく前に進めるっていうのはリアルでした。現実を嫌っていくと、究極、夢の中にしか居場所がなくなってしまいますし、夢を愛するようになってしまいます。おかげさまで、私はショートスリーパーからロングスリーパーになって十年近く経ちますが、いまだに治りません。初めて一歩を踏み出した日の朝日って、すごく眩しくて、まともに目を開けていられないほどなんですけど、それでも意外と心地よくて、ああ世界ってこうだったんだなということを認識させてくれる。そんな体験を思い出した今日このごろです。

 プレイ後にどこか懐かしく温かな気持ちが充足していました。