空の殻

ゲームの感想とか。

【Steam】ゲームプレイ日記 #12【OneShot】

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 感想は一度きりだ、

  と、いうわけで今回はOneShotの感想です。

 プレイのきっかけは、セールでこのゲームがおすすめに出てきたこと。ストアページに行くと、あらすじとゲームの特徴が記載されていました。一部抜粋させていただくと、――『第四の壁』を超える、数々の驚くべき演出――、だそうで。

 メタ要素の強いゲームは私も何作品かプレイしたことがありますが、それらに共通していることは、プレイヤーを驚かせるための演出として使用していることだと思います。ゲーム内のキャラクターが突然プレイヤーに向けて語りかけてきたり、現実世界を認知しているかのような振る舞いをしたり。プレイヤーの思考の埒外から、ありえない驚きを提供するための仕掛けであると認識していました。ゲームのタイトルを挙げることはしませんが、私がプレイしてきたゲームは、中盤以降にそれが明かされることによりプレイヤーの精神にダメージを与えてくる、というものが全てでした。つまり、プレイヤーに驚きをもたらす、この『第四の壁』を超える演出というのは、通常のゲーム以上にネタバレによる損失が大きいわけです。

 小説で言えば、○○化決定、だとか、芸能人の推薦文が書かれた帯は毒にも薬にもなりませんが、衝撃のラストと書かれた帯は吐き気を催す劇物なのです。人によっては発狂して死にます。そんなことをPVにもストアページにも書いてしまっていいのか、と思いながらプレイし始めたわけですが、その考えはものの数分で打ち破られました。

 スタートしてすぐに、ある存在がプレイヤーである私に語りかけてくるのです。そして、ゲーム内主人公であるニコもすぐに私を知覚するようになります。このゲームでは、驚かせるためというよりは、感情移入させるためにメタ演出を使っていたように思いました。キャラクターを操作するのではなく、ニコと協力して進む、そんな意識にさせてくれるのです。『第四の壁』を超える演出はそれで終わらず、パズルもメタ演出を活用していて、非常に楽しめました。エアコンの小さな某ゲームも似たような演出がありましたが、あれよりも凝った仕掛けが沢山あります。それから、シナリオへの影響も言わずもがな。設定が緻密に練られていて、それを紐解いていくための鍵も断片的に散らばっており、じっくり考察しながら進められます。進行にも実績にも関係ないアイテムの使い道があるのも好印象でした(シルバーから貰ったあれを、ある人に見せることで話が聞ける等)。

 そして、ニコと共に困難を乗り越えながら到達した塔では、ある大きな選択を迫られます。この選択の辛さに拍車を掛けていたのは、やはりメタ演出でした。詳細は書けませんが、このゲームを真にクリアしたとき、本当によかったという気持ちだけでなく、虚無が心にありました。別れを告げたニコが一人で歩き出したとき、私のPCと私の心の中に確かに存在していた『ニコ』は去ってしまいました。けれど、私がニコを覚えている限り、そしてニコが私を覚えている限り、世界は存在し続けるのです。実績はまだ残っていますが、私が再びこのゲームをプレイすることはないと思います。

 本当に素晴らしいゲームでした。