空の殻

ゲームの感想とか。

【Steam】ゲームプレイ日記 #7【ATRI -My Dear Moments-】

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 さて、今回は ATRI -My Dear Moments- の感想です。

  ANIPLEX.EXEより徒花異譚と共に配信された本作品。失礼ながら、徒花異譚のついでにプレイしようぐらいの気持ちでした。ですが、いざプレイしてみると予想を大きく上回る感動を与えてもらいました。過去の私にロケットパンチを食らわせてやりたい。

 ゲームを始めると、目の前に広がるのは退廃した世界。そして、そこに佇む女性の姿。誰かとの会話を思い出し、孤独に世界を見つめる彼女。セカイ系を匂わす始まりです。しかし、ボーイミーツガールではありますが、セカイ系というよりは世界を救うためのライトなSFという感じでしょうか。

 片足と未来を失った主人公は、記憶を失ったヒューマノイドのアトリと出会う。主人公はアトリと過ごす中で、大切なものを獲得していく。けれど、残された彼女との時間はたったの45日だけ。これは、ずるい。ずるすぎる。こんなの、泣くに決まっている。おまけに、アトリがかわいすぎる。かわいいを具現化したような存在が余計に別れの時を苦しませる。そして、主人公の夏生も目つきが悪い癖に、とにかくかわいい。もはや、ダブルヒロインじゃないか。かつて、地球を救うんだと決意したのも、そうしなければ自分が救われないから、という悲しい理由。しかし、それも失ってしまい、彼には「光」が、「未来」がなかった。よく心の内で口にする、「時よ過ぎゆけ、おまえは残酷だ」という言葉は、タイトルを想起させながらも悲哀に満ちている。有名すぎるファウストの引用のその逆、つまり彼の心が空っぽである証拠。これがアトリとの出会いで変わるのが、また何とも言えない悲しさを孕んでいる。そのときにはもう、時間は残されていないのだから。そして、大きな欠損を抱えているのはアトリも同じ。あんな殊勝な彼女に対してポンコツなんて決して言えない。

 物語は王道で、正直先の展開は容易に予想ができました。けれど、決して退屈はせず、良い意味で複雑な感情を抱えたまま読み進めていました。嬉しいと悲しいが混じったような、もどかしい気持ち。けれど、クリアしたときにはしっかりと温かな感情が胸に充足していました。王道だからこそ、そこには「光」があって、「未来」がある。希望に満ちた素敵な物語だったと思います。

 紺野アスタさんのシナリオに触れたのは今回が初めてでしたが、これを機に、ころげてとかやってみようかな、と思ってみたり。何にせよ、徒花異譚と共に本編ディスク付きのサントラはマストバイです。そして、今後のANIPLEX.EXEの動向に注目していきたいと思います。